入門編:みんな間違えているワインペアリングの常識!?業界を斬り、本質に迫る。
ワインのペアリングは、料理とワインの相性を最大限に引き出す技術です。
食事の際に適切なワインを選ぶことで、料理の味わいがより深く、豊かになります。
シャンフェ東京では、オーナーによる独自の方法にてペアリングを行なっており、この記事の後半ではそちらも紹介します。
まずは、一般で基本的なペアリングのルールを紹介していきます。
ワインペアリングの基本とは?
1)味のバランス
ワインと料理の味のバランスを保つことが大切です。一般的には、軽めの料理には軽いワイン、濃厚な料理には重めのワインを合わせると調和が取れます
2)地域のマッチング
同じ地域で生産されたワインと料理は、自然と相性が良い場合が多いです。日本食に日本酒が合うように、イタリア料理にはイタリア産ワイン、フランス料理にはフランス産ワインを合わせる事も多いです。
3)味わいの補完
ワインと料理の味が互いに補完し合うことも重要です。例えば、辛口の白ワインは、脂っこい料理の口直しとして働きますし、甘口のワインは、辛味を和らげる効果があります。
4)酸味と塩味の相性
酸味の強いワインは、塩味のある料理とよく合います。例えば、シャルドネなどの白ワインは、塩味の効いたシーフード料理とぴったりです。
これより先は、シャンフェ東京のワインペアリングの独自性について、オーナー ショーンが本質を説いています。
シャンフェ東京のオーナー ショーンは飲食業歴で20年以上の経験があり、人生のほとんどをロサンゼルスで過ごし、日々ワインに触れながら、数々のお客様にワインを提供してきました。
ショーン自身は、ソムリエではないものの、カリフォルニアワインの知識は豊富であり、日々のサービスで何万人というお客様にワインを提供し、『自分の好み』よりも『お客様目線』に徹底して仕事をしてきました。
ナパの有名ワイナリーが直接訪れワインを売りに来るほどの繁盛店を作り上げたショーンは、カリフォルニアの有名レストランでも、休日には必ず勉強しに行く中で、様々なペアリングを体験し感じてきた違和感がありました。
それは、
『ソムリエの考えるペアリングが、ワインと料理で本当に合ってない!』
もちろん、全てのレストランがそうではないのですが、グラスで提供できるワインの種類が極めて少ないため、ほとんどのレストランではメルロー、ピノ・ノワール、カベルネ ソービニヨン、シャルドネ、シャンパンなどのグラスを6〜8種類くらい置いてはいるが、レストランとして万能に使えるワインを選びがちです。
ワイン単体では美味しいものの、一つのワインが全ての料理に合うことは決してありません。
シャルドネにもステンレスで作られてフルーティーなのもあれば、少し甘いのもあり、酸味を感じるものもあれば、樽が全面に出るような重いのも、樽がほのかに香るのもあります。
ワインペアリング:魚料理
『魚料理には白ワイン』は、あまりにも雑な選び方過ぎてしまい、一つ一つの料理に対して、『料理人がお客様にどう感じて欲しいのか』がワイン選びでは重要になる。
ヒラメを例にペアリングのパターンを挙げたいと思います。
ヒラメは非常に淡白で、ヒラメという魚自体に味の個性はほとんどないです。しかしその分、料理人からすれば、塩加減や、ソースなどで味付けを加えやすい凄く美味しい魚でもあります。
刺身であれば、ポン酢・塩・柚子胡椒・醤油
焼けば、ハーブなどで香りづけ・クリームソース・トマトソース・ジェノベーゼ
というようにヒラメだけでも実現できる幅が広いです。
そして、ペアリングというものは、味を打ち消すためではなく味を引き立てるためにあるものだと私は思っているので、『食材に合わせる』よりも『味付けに合わせる』事の方が重要だと思っています。
ポン酢に合わせるなら、酸味を打ち消さないような、少し酸味のある白を。
塩に合わせるなら、極力個性の少ない、バターのような白を。
柚子胡椒に合わせるなら、少しドライな白、もしくはすっきりしたスパークリングを。
醤油に合わせるなら、邪道かもしれないが少し甘めのカベルネソービニヨンのような赤ワイン、もしくは重めのメルローを出すかもしれません。
ハーブであれば、樽が効いた白か赤ワインを。もちろんワインが勝ち過ぎないくらいの加減のワイン。
クリームソースにも色々と深みや香りがあるため、一概にこのワインと断定は難しいですが、クリームソースなら、敢えて酸味を効かせたピノノワールを選ぶかもしれません。
ワインペアリング:肉料理
お肉一つにしても、焼き加減や肉の種類や部位によって必ずワインは変わります。
例えば、当店ではA5松坂牛のイチボという部位をステーキにして提供していました。
こちらの部位は、美しく霜降りが広がり、赤身と脂身のバランスが綺麗に取れた非常に美味しい部位です。
これに合わせるワインとして、カリフォルニアのナパのプリズナーワインカンパニーのジンファンデルをいつも提供させて頂いてました。
こちらのワイナリーのワインは非常に優秀でアメリカでも人気が高く、値段も決して安くはありません。
しかし、このジンファンデルが赤の種類では一番価格が低いにも関わらず、このいちぼにはドンピシャで合うワインです。
ジンファンデルのドライさに、少し感じるベリーと胡椒感が、お肉にも、食事の最後を締めるワインとしてもピッタリのワインでした。
このワインを出すとお客様の9割の方が大満足して帰られます 。
そして、近日ではイチボから牛タンに当店はお肉を変え、牛タンを低温でゆっくり柔らかく調理し、ほぼレアの状態で提供させて頂いております。
牛タンは非常に甘く、しかしながら、少しだけ赤身から血の味が出て酸味も感じられるため、今は樽の匂いが弱い、酸味少なめのピノ・ノワールを提供しています。
またしても、食事の最後のワインですので、敢えて重いワインを選ばず、すっきりとステーキを味わえるように選んでいるのと、牛タンとの相性がこちらもドンピシャですので使わせて頂いております。
カリフォルニアのワイナリーからの抜擢で、カリフォルニアのロマネコンティと称されるカレラという生産者のピノ・ノワールを使わせて頂いております。
こちらのワインも9割のお客様が大満足で笑顔で飲んでいただいており、サービスマン冥利に尽きる想いです。
そして、この9割という言葉が大事になってくると私は思っています。
ペアリングをするお客様の中には、むしろ経験から言わせていただくと、半数以上のお客様が、ペアリングで『料理に合うワイン』なんて求めておらず、『自分が好きな美味しいワインが飲みたい』と思っているのが本音です。
どれだけサービス側が色々考え、試行錯誤し、頑張って選び抜いたワインであれ、最後にそれを『好き』と思うか思わないかはお客様次第なんです。
だから私はドヤ顔で全然美味しくないワインを出してくるレストランが正直苦手です(笑)
だからこそ、美味しいワインが飲みたいお客様には、『料理に一番合うワイン』でなくても、お客様の好みに合わせて提供する事もあります。
スイーツが好きなお客様、辛い料理が好きなお客様、パクチーが好きor食べられない、コーヒーはラテ、ブラック、飲めない、お茶派。
人の味覚は十人十色です。
なので、ワイン選びもサービスも柔軟に十人十色であるべきだと私は思います。
コースで提供する料理もそうです。
当店ではどうにか味を十人十色に合わせるべく、シェフが料理を考えて作っております。お客様に合わせてしまうと、目指している、作りたい料理ではない事も多々ございます。
しかし、ペアリングの良いところは、様々な種類のワインを用意してさえいれば、前持って仕込みをする必要もなく、お客様の好みを一緒に探しながら、好きなワインを共に見つける事が出来るという事です。
シャンフェ東京では、伝統的なペアリングのルールに捉われずに、創造的で意外性のあるワインペアリングを提案しています。提供する側が良いと思うワイン、を一度提案します。
しかし最後は、しっかりと好みを聞き、そのワインにするかの最終決定権をお客様に委ねることをしています。もちろん、『絶対このワインが良い!』と当店が思って出しているワインもあります。ワインを二つ提案し、好みの方を選んで頂く事もあります。赤でも白でも楽しめる料理には、お客様が飲みたい方を出すこともあります。
グラスに関しても拘りを持っていて、グラスアーティスト小牧広平が手掛ける手作りで唯一無二の「ペコリグラス」を用いたり、他のレストランでは絶対に体験できないアートのようなグラスで楽しんでもらっています。
また、男性のお客様と女性のお客様、二人同時にペアリングをされても違うワインを両者に提供する事もあります。
ワインペアリングは経験と勉強が必要になります。
料理に合うワインを選ぶ事を絶対条件としながらも、香り、最初の味、余韻を考えながら、料理とワインを深く理解し、その上でお客様が本当に飲みたいワインを選びます。
料理に合うか、合わないか、もちろん大変重要な事ですが、
ペアリングというお客様との短い時間で本当に一番大事にするべき事、
それは
『お客様にとって合うか合わないか』
ではないでしょうか?